Blank Maps
CAGE GALLERY は、2023年12月11日(月)より、広島を拠点に活動する美術作家 菅亮平の個展「Blank Maps」を開催します。
菅亮平は、主に美術館やギャラリーの展示空間それ自体を題材とした写真作品や映像作品で知られる美術作家です。「空虚(ヴォイド)」を主題とした創作に取り組む菅は、絵画、写真、映像、立体、サウンド、パフォーマンスなど、様々なメディウムを横断的かつ包括的に扱いながら、国内外で作品制作とアートプロジェクトを行ってきました。本展で発表される新作《Thematic Map of the Blank》では、これまでの菅の幾つかの作品の中でモチーフとなってきた「地図」を題材としています。
菅は本作の制作にあたって、ルイス・キャロルの小説『スナーク狩り』を参照しています。同作は、「スナーク(the snark)」と呼ばれる、架空の生物を探し求める探索隊の物語であり、その中には白紙の海図を手に航路に出るという示唆的な逸話が登場します。白紙の海路は、一般的に考えられる地図としての機能を果たさない矛盾に満ちた存在である一方で、その空白の表面は現実の海とその表象の界面それ自体を指し示しているとも言えます。現実と表象の対照性の間に横たわる白紙の地図というテーゼは、長年にわたって菅を惹きつけてきました。
菅の《Thematic Map of the Blank》では、白の凸版印刷によって枠取られた長方形の空白の外側に、「LATITUDE(緯度)」「EQUATOR(赤道)」「SOUTH POLE(南極)」「MERIDIAN(子午線)」「ZENITH(天頂)」といった、座標を表す10の用語が各辺に沿って並べられて印字されています。それらの文字情報は、各シートごとに配列と位置が異なっており、その意味や指示性は無効化されているかのように解釈されます。
本展では、二つのウィンドウ・ギャラリーに対して、それぞれのシートが一枚ずつ展示され、会期中入れ替えを行いながら合計4枚の作品が展示されます。主題としてのヴォイドとメディウム・スタディの延長線の中で、空白のナラティブの可能性を問い続けてきた菅によるキャロルのリプレゼンテーションをぜひご高覧ください。
会期中には、原始的な素材や存在への関心をもとに、固有性に関わる問題をテーマに絵画やインスタレーション作品を制作するアーティストの李豪哲氏とのオンライン・クロストークイベント「空間と時間の表層」を開催し、菅の本展における取り組みについて議論を耕す機会を設けます。
展示概要
Blank Maps
会期: 2023年12月11日(月) – 2024年2月26日(月)
点灯時間: 11:00 – 20:00
会場: CAGE GALLERY
ハンドアウト:ギャラリー向かいのHender Scheme「スキマ」内
トークイベント
「空間と時間の表層」
2024年2月3日(土)20:00-22:00
オンライン / 無料
登壇者:菅亮平 × 李豪哲
申し込みフォーム > https://forms.gle/9foS15PgD4fqoAvY9
アーティストとして長年親交を持つ菅亮平と李豪哲が、同時期に開催する個展「Blank Maps」(Cage Gallery / 東京)と「A Second in Thousands – 36°19’21″N, 139°01’09”E」(rin art association / 群馬)に際し、それぞれがテーマとした空間と時間を巡ってクロストークを行います。
菅亮平 Ryohei Kan
1983年愛媛県生まれ。2020年より広島県在住。2016年に東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了、博士号(美術)を取得。2019年にミュンヘン国立造形美術アカデミー修了、マイスターシューラー号を取得。「空虚(Void)」をめぐる思考をもとに、多様なメディアを横断的に扱いながら作品制作とアートプロジェクトに取り組み、国内外で発表する。近年の主な個展に「Half-life of Archetype」(広島県立美術館 / 広島 / 2023年)、「K 15-30D」(広島芸術センター / 広島 / 2022年)、「Cube with Eye」(スイッチポイント / 東京 / 2019年)、「As you see it」(ヤマモト・ケイコ・ロシェックス / ロンドン / 2019年)、「In the Walls」(資生堂ギャラリー / 東京 / 2017年)などがある。
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