CAGE GALLERY

  • 額縁の中の額縁

    長岡勉
    額縁の中の額縁


    額縁の中の額縁に関するテキスト
     
    「額縁としてのギャラリー」
     幅と高さが180cm程のガラスに奥行き24cmの窓枠が内側にはり出した薄い空間が2つ、通りに面してならんでいる。これらがCAGEギャラリーの展示空間の全てである。
     ショーウィンドウとしても奥行きの浅い空間は、展示空間というより、平面作品をフレーミングする額縁そのもののようである。そこで額縁のようなギャラリーの中に額縁を入れ子状に挿入することで浅い空間に奥行きを与え、積極的に鑑賞者との関係を作ることを考えた。
     
    「捲れた額縁」
     通常であれば窓に正対する正面の白い壁に作品が設置される。しかし、通りを行き交う人たちは、その前を移動しながら横目で作品を見ることになる。そこで、壁から捲れ上がるように額縁を張り出させることで、作品と人の“向き“が積極的に関わるようにした。
     額縁のようなとは言うものの、そこには24c m程度の奥行きの空間がある。その空間は、前面のガラス面、ステンレス仕上の“額縁に相当する“底面・側面・上面、正面の白い壁面、の計6面で囲まれている。これらの全ての面を積極的に関係させるために、額縁はそれぞれの面にもたれ掛かったり、面同士を繋ぐように折れ曲がるように配置されている。
     
    「オブジェクトスペシフィック」
     額縁のようなギャラリーに新たに額縁を挿入するという展示方針は、サイトスペシフィックなアプローチではある。ただし、新たに差し込む額縁は窓枠(額縁)を形態として参照するわけではなく、特定の作品をフレーミングするわけでもない。そのどちらの状態でもない額縁を考えることで、特定の対象との関係が強くなりすぎず、むしろ新たな関係を作っていく余地があるものを目指した。自律的(オブジェクトスペシフィックな)存在としてありながら、場所に合わせて調整配置されていく(サイトスペシフィックな)側面を併せ持つ額縁のあり方を探っていった。簡単に一言で言うと、既に存在するモノ(オブジェクト)を環境に合わせて配置していくことをオブジェクトスペシフィックと呼んでいる。
     
    「小さな境界としての建築」
    そうして出来上がった額縁によって、ショーウィンドウ越しに移り込む周辺の景色や行き交う人、小さな日常の断片がフレーミングされ、一体化した風景となる作品を制作した。額縁は自分にとって、それがあることで“環境“と“人“と“もの“の関係(境界)を作り出すとても小さな建築のようなものである。
     
    長岡勉

     
    ***
     
     
    CAGE GALLERY は、2025年3月15日(土) より、建築家・長岡勉による「額縁の中の額縁」を開催します。
     
    長岡は、建築、インテリアの設計を行いながら、ものと空間の関係性、そしてそれを鑑賞する人を含めた状況にアプローチする作品を制作しています。2024年に東京・渋谷の (PLACE) by methodで開催された「pedestal & frame」では、台座と額縁で建築(空間)を立ち上げることを命題に、多数のオブジェクト群による空間を発表しました。
     
    本展「額縁の中の額縁」は、台座と額縁に対する長岡の関心から派生するように、CAGE GALLERYをウィンドウ=フレーム=額縁と捉えることから計画されました。このコンセプトの背景には、事物が連鎖することで立ち上がる空間を「建築」と捉え、その関係性のうちに潜っていく行為が建築の経験になるような、長岡独自のまなざしが投影されています。インストールされた額縁の群は、さまざまな形態と色彩を持ち、鑑賞者それぞれに立ち上がる関係性の余白をつくり出していると言えるでしょう。
     
    長岡による本展を、この機会にぜひご覧ください。
     
     
     
     
    展示概要
     
    額縁の中の額縁
    長岡勉
    会期: 2025年3月15日(土) – 4月13日(日)
    点灯時間: 11:00 – 20:00
    会場: CAGE GALLERY
    ハンドアウト:ギャラリー向かいのHender Scheme「スキマ」内
     
     
     
     
     
    長岡勉 Ben Nagaoka
     
    建築家 POINT代表 東京造形大学准教授 1970年東京生まれ 慶應義塾大学政策・メディア研究科修了 2000年POINTを設立、2020年からVUILDメンバーとして活動 東京建築士会住宅建築賞入賞、JCDデザインアワード金賞他受賞多数
    instagram
    http://www.point-tokyo.jp
     
     
     
     
    関連企画
     

    トークイベント#1
    「Anybody Seen the Same River Twice?」×「額縁の中の額縁」合同企画
    トークイベント「同じ川とふたつの額縁」


    日時:2025年3月29日(土)17:00—19:00
    会場:プリズミックギャラリー
    参加費:無料
    申込:不要
    登壇者:ゴッティンガム、長岡勉、湯浅良介 
    モデレーター:寺田慎平(w/)、杉崎広空(w/)
     

    登壇者展覧会情報

    “Anybody seen the same river twice?”
    https://anybody-river.com
    “Anybody seen the same river twice?”展覧会概要テキスト
     

    登壇者プロフィール

    湯浅良介
    https://www.yuasaryosuke.com
    ゴッティンガム
    https://a-z.gottingham.com
    寺田慎平(w/)
    http://www.wlllines.net/
    杉崎広空(w/)
    https://hirotakasugisaki.com/
    http://www.wlllines.net/

     

    トークイベント#2
    美術家・末永史尚と“額縁“についてオンライントーク


    日時:2025年4月8日(火)19:00—20:30
    オンライントークURL
    https://us02web.zoom.us/j/83582106083?pwd=bU3c77sppefCdsLqt5P9KbcvWuQXqT.1
    ミーティング ID: 835 8210 6083
    パスコード: 851738
    参加費:無料
    申込:不要
    登壇者:長岡勉、末永史尚
     

    登壇者プロフィール

    末永史尚 Fuminao Suenaga
    美術家 東京造形大学教授 1974年山口生まれ 東京造形大学造形学部美術学科美術Ⅰ類修了
     
    日常的に接している、あるいは展示空間に関わるものから、目にしているが見ていないことにしていること等を探り、そこから絵画や立体作品を制作している。主な展覧会として、「百年の編み手たち ̶流動する日本の近現代美術̶」(2019年、東京都現代美術館)、「アートセンターをひらく」(2019年、水戸芸術館現代美術ギャラリー)、個展「ピクチャーフレーム」(2020年、Maki Fine Arts)など。
    http://fuminaosuenaga.com