5つの印象
東京の2つの窓辺で、オリンピックと同じ期間、同じ場所で開催される展覧会を告知。スペクタクルで印象と記憶をつくる祝祭に、作家のパラレルな時空が介入します。わずか2枚のポスターによる、ささやかだが、決して小さくない投げかけとして。
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CAGE GALLERYは、2月1日(土)より磯谷博史による「5つの印象」を開催いたします。
磯谷博史は1978年生まれの美術家。様々な素材と形式を行き来し、多層的な出来事をつくりだす作品を発表しています。近年は写真を媒介に時間と事物の関係を扱い、ポンピドゥー・センター主催のコレクション展「The Specter of Surrealism」(2017)や森美術館「六本木クロッシング2019展:つないでみる」(2019)、ポーラ美術館「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」(2019)などに出展、国内外で活動を広げています。
本展「5つの印象」は、セピアカラーの手のひらの写真と絵具で構成され、オリンピックの期間と場所に重なった、ある展覧会を告知する2枚のポスターからなります。手のひらには5つの円が描かれていますが、これは過去にオリンピックを開催した国々の硬貨を肌に押し付け、充血させることで視覚化されました。写真はセピアカラーに置き換えられ、かわりに、かつてそこにあった充血の色がペイントされています。
ポスターに記載された情報は近い将来起こる出来事の告知です。一方、写真はやがて消えゆく肌の刻印を写した過去の記録であり、事後的にペイントされた絵具は現在を強調するしるしとして捉えられます。また、本展は「『展覧会の告知』の展覧会」という構造を持ち、CAGE GALLERYにおける会期と告知される会期との間にずれを生むなど、様々な方法で複数の時間が織り込まれた場をつくりだしていると言えます。
磯谷は、大きな物語としての祝祭をモチーフに、それに連なるいくつかの時間を操作することで、スペクタクルにおける記憶の恣意性を提示しているのかもしれません。祝祭は、大勢のパーソナルな時間の統合と整理によって引き起こされるとも捉えられるでしょう。
磯谷博史の「5つの印象」を、是非この機会にご覧ください。
展示概要
磯谷博史「5つの印象」
会期: 2020年2月1日(土) – 3月29日(日)
点灯時間: 11:00 – 20:00
会場: CAGE GALLERY
ハンドアウト:ギャラリー向かいのHender Scheme「スキマ」内
*本展覧会は、第12回恵比寿映像祭「時間を想像する」地域連携プログラムです。
https://www.yebizo.com/jp/program/detail/2020-09-05
磯谷博史 Hirofumi Isoya
1978年生まれ。東京藝術大学建築科を卒業後、同大学大学院先端芸術表現科および、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ、アソシエイトリサーチプログラムで美術を学ぶ。彫刻、写真、ドローイング、それら相互の関わりを通して、認識の一貫性や、統合的な時間感覚を再考する。2017年、ポンピドゥー・センターが主催するコレクション展「The Specter of Surrealism」に参加、昨年森美術館で開催された「六本木クロッシング2019展:つないでみる」やポーラ美術館「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」などに出展。主なパブリックコレクションに、ポンピドゥー・センター(パリ)、サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)など。
磯谷博史《5つの印象》2019
Hirofumi Isoya, 5 impressions, 2019